富裕層が数多く暮らす東京・港区の麻布界隈。そこでは多くの“麻布妻”と呼ばれる人たちが暮らしているが、中には「稼ぐ夫」からモラハラを受けているケースがあるという。モラハラ事例に詳しい、ライターの高木希美氏がリポートする。
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外銀勤めの夫を持つ美優さん(仮名、以下同)は、34歳の麻布妻です。娘さんは3歳。
「すごく子供が好きで、結婚して子供を持つことが夢だったんです。子供が好きだからチャイルドマインダーの資格も独身時代に取ったくらい。まだ若いし、親からも“2人目は?”ってよく聞かれるんですけど、夫からはずっと『経済的に余裕ない』って2人目を拒否されていて……」(美優さん。以下同)
チャイルドマインダーとは、家庭的な保育サービスを行う専門家のこと。「金銭的に余裕ない」と言われた美優さん夫婦は、麻布の家賃35万円ほどのマンションに住んでいます。一般的に考えれば、かなり裕福なはず。
美優さんはこの3年間、ずっとワンオペ育児だったそうです。
「子供がいることは嬉しいからワンオペでも実際そこまで苦痛ではなくて。娘といる時間は幸せだから、いいんです。ただ、完全ワンオペで夫に迷惑かけていないのに2人目を拒否されるのは精神的に辛くて」
夫は、美優さんの6つ年上で40歳。
「彼、結婚前に私にこう言っていたんです。『昔、3年付き合った彼女から“結婚したらすぐ子供を欲しい”って言われて、よく考えたら自分の人生を犠牲にするくらいお前のこと好きじゃないわって別れたんだよね。けど美優は特別だし何でも夢を叶えてあげたい』って。この話って今思うと、モラハラサインだったのかもしれません。けど私、彼のこと頼れるなって思っちゃったんですよね」
結婚し、しばらくして妊娠。その頃から夫はまた独身の時のように遊びを再開するようになったそうです。
「結婚当初は、『美優が俺の趣味だから』っていうくらい、一緒にいてくれました。でも、妊娠してから、友達との予定が急激に増え始めたんです。浮気してるのかなって感じた時もありましたが、最悪、浮気しててもそれくらいでおさまるならいいやと思って、放っておいてます。子供がとにかく大事なので……」
ある日、娘さんが「ママ、うちにも赤ちゃんほしいね、弟か妹がいたらいいな」と言うようになったのを機に、美優さんは思い切って2人目の希望を伝えたそうです。すると、夫の第一声は、「うちにそんな余裕あると思ってんの?」でした。