「メニューの目新しさで人気を博しましたが、店舗で肉を焼くため、提供に時間がかかるという問題があった。出店数を伸ばし切る前に、競合他社が焼き牛丼と特徴が似た『カルビ丼』などの商品で追随したことも打撃となりました」(同前)
こうした新興店の急拡大や急撤退を「無計画に拡大している」「勢いに乗って増やし過ぎたんだろう」などと捉えては、ビジネスの本質を見誤る。その裏には、各企業のマーケティング戦略が隠されている。
「ヤドカリ商法」の強み
一気に出店・拡大することは、勢いに任せた無謀な策などではなく、企業にとって「経営効率化」のための戦略だという。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏が解説する。
「多店舗化することでブランドの認知度が上がるだけでなく、仕入れ・配送にかかるコストが下がり、低価格での販売が可能になります。特定の地域に複数の店舗を出す出店方式を『集中ドミナント』といい、コンビニやファミリーレストランだけでなく、多くの新興チェーン店も採用している戦略です」
近くに出店しすぎると、「客を奪い合ってしまうのでは?」と思えるが、佐藤氏はこう解説する。
「メリットは多く、例えば1号店が満員でも、近くにある2号店へとお客さんを誘導して顧客の取り逃しを減らせる。現在は飲食業界の人手不足が深刻ですが、近隣に店舗があればスタッフの融通も利くし、廃棄ロス軽減にも繋がります」