「75歳定年制」が導入されたら、あなたは働くことを選ぶだろうか。ほとんど知られていないが、政府は6月21日に閣議決定した「成長戦略実行計画」でまず70歳までの雇用延長方針を打ち出した。
具体的には、企業が「定年廃止」か「70歳定年」、「70歳までの雇用継続」などを選択して労使交渉を行なうとされ、来年の通常国会に関連法案を提出する見通しだ。
狙いは明らか。政府の経済財政諮問会議の資料によると、定年(雇用延長)を70歳まで引き上げた場合の経済効果は、就業者が217万人増、消費が4兆円増加し、公的年金などの社会保険料収入が約2.2兆円増加すると試算されている。高齢者を長く働かせ、保険料や税金をがっぽり払わせたいのである。高齢者が長く働くほど政府は潤う。
次が「75歳定年制」だ。政府には“高齢者は75歳まで働ける”という試算がある。
内閣官房「日本経済再生総合事務局」の資料(2019年)では、健康状態からみて働くことが可能な人の割合(潜在的就業率)は「70~74歳男性」で84.1%にのぼるが、実際の就業率は32.7%にとどまる。同年齢層の半数以上は“働けるのに働いていない”とされ、〈健康状態だけで見ると、高齢者の就業率は、現在より大幅に高い水準になる余地がある〉と分析している。
これを真に受けたら、日本人男性の健康寿命は平均72.14歳だから、健康寿命が尽きても働かされて税金と厚生年金保険料を貢がされることになる。