政府がこれから取り組む政策を定めた「骨太の方針」(6月21日に閣議決定)に新たに盛り込まれたのが「勤労者皆保険制度」の検討だ。これは「世代間格差の是正」「負担の公平」を訴える小泉進次郎氏が提唱してきたもので、パート主婦、高齢者、非正規労働者、自営業者まですべて厚生年金や社会保険に加入させて保険料を払わせる仕組みだ。
すでに国の制度には「国民皆年金」と「国民皆保険(健康保険)」があるのに、なぜ、屋上屋の「勤労者皆保険」が必要なのか。これを読むと狙いがよくわかる。
〈いわゆる「130万円の壁」、「106万円の壁」や業種や企業規模による「壁」を打破すべく取り組む〉(前述の人生100年時代の社会保障改革ビジョンより)
どちらの「壁」も夫の扶養家族として年金の保険料も健康保険料も払わなくていいパート勤務の主婦(第3号被保険者)が、厚生年金や健康保険に加入し、自分で保険料を納めなければならなくなる収入基準だ。
進次郎氏の父である小泉純一郎氏風に言えば「第3号制度をぶっ壊す」というのが本音だとわかる。社会保険労務士・北山茂治氏が指摘する。
「第3号被保険者が厚生年金に加入すると将来の年金受給額は増えます。しかし、厚生年金に加入すれば健康保険の保険料も自分で支払わなければなりません。支払う保険料を年金が増える分で取り戻すには20年以上かかるケースが多い」
パートの厚生年金加入要件は事業所の規模(従業員数)や週の勤務時間数、収入などで細かく定められている。現在、パート勤務をしながら夫の扶養に入っている「第3号」の妻は、「壁」を越えないように働き、給料を丸ごと手取りでもらうことで貯金をしたほうが「老後資産」を守れるのである。
※週刊ポスト2019年7月12日号