近年、分譲戸数が減少し続けている新築マンション市場。売れ行きが停滞している一方で、価格の高止まりは解消されていない。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員は、現在の状況を以下のように説明する。
「新築マンションに関しては大手デベロッパーの寡占化が進んだ結果、たとえ売れなくても簡単には値下げしないというのが現状です。とりわけ財閥系のデベロッパーはビル業が好調で、マンションの売れ行きが鈍ってもダメージは少ない。その他にもホテルや物流関係、海外での事業も多く、不動産業というトータルで捉えると、大手デベロッパーにとってマンションは主力商品ではなくなってきているのかもしれません」(井出氏、以下同)
大手デベロッパーの寡占化による市場の鈍化は、数字にも明確に表れている。今年1月から5月までの首都圏の新築マンション分譲戸数は5085戸(東京カンテイ調べ)。近年最低の水準だった昨年の同期間が7086戸、年間で2万3201戸だったことを考えると、その少なさは一目瞭然だ。一方で平均坪単価は315.8万円と、昨年を上回るような高価格で推移している。
「このままのペースで進むと、最終的な分譲戸数はバブル崩壊直後の1992年以来の少なさになるのでは、という予想もあります。そんな状況であっても、先に申し上げた通り体力のある大手デベロッパーの比率が高いため、そう簡単には値下げ競争をするような流れにはならないでしょう。安売りせずに物件の供給戸数を抑え、5年、10年という長いスパンで売り続ける算段なのだと思います」
東京オリンピックに関する建設事業や各都市で進む再開発、リニア中央新幹線をはじめとしたインフラ整備などの要素によって、首都圏では建設コストも依然として高い状態が続いている。そんな中、10月に予定されている消費増税は市場にどのような影響を与えるのだろうか。井出氏は「やはり10%という大台は心理的ハードルを高くする」と指摘する。
「昨年の後半ごろから実需が停滞しており、世帯収入が1500万円を超えていたパワーカップル層にも動きがない。住宅マーケット全体が勢いを失っているだけに、結果的に消費増税が販売価格を下げるバイアスとして働くのではないでしょうか」