広々とした田園が広がる東川の町は、「日本一写真写りのいい町」を宣言しており、景観を壊す建物を新たに造ることが規制されている。
最も象徴的なのは、2014年に建て替えられた「東川小学校」だろう。東京ドーム4.5個分という広大な敷地には、芝生のグラウンドや田んぼ、果樹園がある。約370人の生徒が通う校舎は全長270mと巨大だが、平屋造りのため圧迫感がない。東川小は、全国平均を上回る学力の高さでも注目を集めている。
東川町長の松岡市郎さんは、東川町から世界へ羽ばたく人材が生まれてほしいと願う。
「2017年から、文部科学省の指定を受け、町内の小、中学校で『グローブ』という国際教育を取り入れています。1985年に行われた“世界へ向けた写真の町”宣言どおり、国際的に開けた町づくりを目指しています。町役場らしく“空き家対策”などを考えるべきかもしれませんが、空き家がないんですよ」
そう言って松岡さんは笑顔を見せた。
2人目の出産を間近に控える前出の関奈央さんは、この町での子育てに、「何も不安がない」と断言する。
「移住者が多いので、『地元組』『移住組』といったママ友間の壁がなく、孤立するということがありません。町の子供たちも年齢に関係なく仲がよくて、お祭りなどへ行くと、気づいたら上級生の子たちがうちの子の面倒を見てくれていたこともありました」