「田舎暮らし」と聞いて、あなたはどんな生活をイメージするだろうか。定年退職後に都会の喧騒から離れて、緑豊かな大自然に囲まれてゆったり過ごす。晴れの日は土を耕し、雨が降れば家の中で書に親しむ。夕食は地ものを肴に酒を酌み交わす――そんな悠々自適の生活をイメージする人が多いはずだ。
だが実像は変わりつつある。東京にある地方移住を希望する都市住民と全国の地方自治体とのマッチングを行う「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」理事長の高橋公さんが指摘する。
「2008年から2018年の10年で、移住相談の件数は、2475件から4万1518件の20倍に増えました。以前は50代以上が相談者の7割でしたが、今は20~40代が7割を超え、若い世代ほど移住を希望するようになりました。相談内容も以前は“定年後に住むいい移住先はありませんか”という漠然としたものでしたが、最近は、“○○県に移住したい”という具体的な希望になりました」
SNSの普及も若い世代の移住志向を後押ししているという。
「地方に移住した若者がスマートフォンを使い、SNSに田舎暮らしの様子をきれいな写真付きでアップするんです。それを見た都会の若者が“地方もいいもんだな”と感化されて、移住志向が一段と高まったようです」(高橋さん)
実際に地方移住者は増えている。毎日新聞とNHK、明治大学地域ガバナンス論研究室の共同調査によると、2014年の地方移住者数は1万1735人で、2009年度からの5年間で4倍以上に増えたという。
定年後の晴耕雨読は、今は昔。若い世代は何を求めて、地方に向かうのだろうか。