内閣府は7月5日、5月の景気動向指数の速報値を発表し、基調判断を「悪化」から「下げ止まり」に上方修正し、景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いとした。だが、ここから日本の景気が回復傾向に向かうと楽観視することはできない。経済アナリストの森永卓郎氏は「秋以降、日本の景気は真っ逆さまに落ちる可能性が高い」と、次のように警鐘を鳴らす。
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私は、安倍晋三総理が2019年10月に予定されている消費税率引き上げを再び取り止めると確信していた。その理由は、政府はずっと消費増税を止める条件として「リーマン・ショック並みの経済危機」を挙げていたが、世界経済はすでにリーマン・ショック並みの経済危機に陥っているからだ。
IMF(国際通貨基金)が2019年4月に発表した世界経済見通しでは、2019年の世界の実質経済成長率が2019年1月発表の3.5%から3.3%へ下方修正された。さらに5月23日、IMFは米中貿易戦争が激化した場合、世界経済の実質成長率が0.3%押し下げられるとの試算を発表した。つまり、世界の実質的な経済成長率は3.0%まで下がる可能性があるということだ。
実際、世界銀行は6月に、2019年の世界経済見通しをやはり下方修正して、成長率を2.6%まで引き下げている。
振り返れば、リーマン・ショックが起こった翌年の2009年から5年間の世界経済成長率を平均すると3.3%だった。したがって、世界経済はすでにリーマン・ショックを超える経済危機に陥っていると考えられるのだ。
世界的に景気が後退していることを示す指標はまだある。2018年11月まで米国債(10年債)の利回りは3%台だった。ところが、現状は2.2%まで一気に落ちている。同じ10年債の利回りでは、日本、ドイツ、スイス、デンマークではすでにマイナスとなっている。