《老後を過ごす資金は年金だけでは不充分であり、赤字を補うには2000万円近い貯蓄が必要になる》──6月3日に金融庁が公表した金融審議会の報告書は、「老後に2000万円必要」という内容が多くの国民にショックを与えた。
その一方、7月2日に厚生労働省が公表した2018年の国民生活基礎調査によると、「年金や恩給が総所得の100%を占める」と答えた高齢者世帯が51.1%と半数を超えた。
安倍晋三首相は6月18日の参院厚生労働委員会で金融庁の報告書について、「あたかも一律に老後の生活費が月5万円赤字になるとしたのは国民に誤解と大きな不安を与えるもの。高齢者の実態はさまざまで、平均での乱暴な議論は不適切だった」と語ったが、突如降って湧いた「年金だけでは足りない」という事実に戸惑ったままの人は多いはずだ。
「本当に大切なのは、2000万円という数字ではない」
そう指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの森田悦子さん。
「金融庁の試算は、65才の夫と60才の妻の“平均的な生活費”が一般的な年金支給額(夫婦で21万円)を月5万円上回り、それが老後の30年間ずっと続くと2000万円くらい足りなくなるよ、というお話です。注目すべきなのは2000万円という数字ではなく、“毎月5万円の赤字”が積み上がるということ。この赤字を減らせば、老後に必要とされる金額も減っていきます」(森田さん)
つまり、2000万円の貯蓄以上に毎月5万円とされる赤字を減らすため「生活のダウンサイジング」をすることが重要ということだ。
「日々の暮らしを見直して生活費を圧縮すれば、月々の赤字を減らすことができるうえ、貯蓄が積み上がります。生活をダウンサイジングすることはそれほど難しくなく、支出をしっかり抑えられれば、老後資金に2000万円も必要ないのです」(森田さん)
どうすれば2000万円なくても幸せな老後を送れるのだろうか。