サラリーマン家庭であれば悲観することはない
実際の年金生活者はどんな暮らしをしているのか。関西の都市部に住む山崎弘之さん(仮名・71才)の例で見てみよう。
従業員200人ほどのメーカーで65才まで働き、妻の陽子さん(仮名・69才)は29才まで信用金庫に勤務して、その後、長男が生まれてからは派遣社員として週4日ほど働いていた。
現在、弘之さんが受け取る厚生年金は月約21万円、陽子さんは月約12万円だ。山崎さん夫婦は夫が65才まで働いたほか、妻も働いていたので年金が月合計約33万円と、平均年金受給額より多めになった。とはいえ特別ぜいたくな暮らしをしているわけではない。
「月々の生活費は食費や光熱費、携帯電話代に生命保険代や医療保険代などで最低でも20万円は必要。医療費と健康食品代が1万円程度。孫たちへのお小遣いや進学祝いもありますし、この年になると親戚や知人に亡くなる人も多く、冠婚葬祭のお金もかさみます。そこに私の美容院代など、もろもろ合算すれば、月30万円を超える出費になります。
本は図書館を利用して、衣服を買うことはめったになくなりました。健康のために夫とふたりで、毎日30分のウオーキングも欠かしません」(陽子さん)
かといって、節約一辺倒なわけではない。
「ふたりとも食べることが大好きなので、月に1回は大阪や京都へおいしいものを食べに出かけますし、年に1回は温泉旅行にも行きます」(陽子さん)
生活にメリハリをつけ、自分たちの生きがいにつながる楽しみは維持している。そんな山崎さん夫婦の老後の支出が、大きな減少につながったのは住宅ローンの完済だった。
「夫の退職金で、住宅ローンの残額1200万円ほどをすべて返済しました。中小企業なので退職金もそれほど多くはなくローンを完済したら貯金は500万円ほどになりましたが、ぜいたくを望まなければ老後の生活に困ることはありません」(陽子さん)