田代尚機のチャイナ・リサーチ

苦境に立つ韓国企業 サムスン電子が中国で大苦戦を強いられるワケ

 日本の電器・電子産業は世界において、川下市場に位置する製品では存在感が薄くなってしまったが、素材や電子部品といった川上市場に位置する製品に活路を見出し、そうした分野では強い競争力を保っている。一般消費者には目立たないだけである。これらの開発には、地道な技術開発とその蓄積が必要不可欠であるが、日本企業も韓国企業に対して強い警戒感を持っており、韓国企業に対して簡単には技術移転を許したりはしないであろう。

 国際競争力のある韓国企業を挙げるとすれば、電器・電子ではサムスン電子、LG電子、SKハイニックスなど、自動車では現代自動車、起亜自動車など、鉄鋼ではポスコなど。石油化学、造船、重工業、航空会社、商社などでもいくつか代表企業がある。しかし、金融では世界規模の企業はない。この点が、韓国経済の泣き所の一つである。

 国内市場規模が中国、アメリカ、EU、日本などと比べて小さい分、産業の厚みは薄く、代表企業、代表産業が不振となると、経済は途端に厳しくなる。

 さらに、輸出依存度が高い分、世界経済や、世界情勢の影響を受けやすい。中国が産業のレベルアップを進め、フルセット型産業構造である上に各産業がそれぞれの厚みを更に増す中で、そうした本土市場において韓国経済を牽引する企業は、いずれの分野でも競り負けている。

 日本は外交上、韓国に対して厳しい政策を採りつつあり、8月にも韓国を「ホワイト国」から外すことを検討しているようだ。そうなれば、韓国の2枚看板である電子機器、自動車が大きな影響を受けることになるだろう。

 しかし、そうした短期的な影響よりも、長期的に主力産業が中国企業に打ち負かされることによる悪影響の方が大きい。韓国経済は今、非常に厳しい状況にある。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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