定年後の暮らしにはトラブルがたくさん潜んでいる。健康や家族関係、犯罪被害など数々のリスクが存在する。そんな時、自分を守るための最大の武器になるのが“法律”だ。定年後、家にいる時間が長くなり、妻との関係が悪化。ある日、「あなたと離婚したい」と切り出されたら――。
アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士が語る。
「不倫やDVがあったならともかく、性格の不一致という程度では裁判所は離婚を認めません。民法では離婚事由といって、離婚する際には法的な条件があり、『配偶者に不貞な行為があったとき』『配偶者から悪意で遺棄されたとき』『配偶者の生死が3年以上明らかでないとき』などに当てはまらなければ、離婚を拒否できます」
ただ、妻が出て行ってしまい別居状態になると、話が複雑になるという。
「夫に収入があり、妻が無職の場合、別居した妻に生活費を支払う義務が生じます。別々で生活すると経済的な負担が大きくなり、結局、離婚に至るケースが多いです」(高橋氏)
いざ離婚となれば、民法768条で規定されているように、夫婦で築いた財産は分配しなければならない。
「定年後となれば婚姻関係も長く子供も成長している場合が多いので、不動産や預貯金、退職金などの財産を妻と折半にするケースが多い。不動産しか財産がなかった場合は売却して財産分与となり、住むところを追われる場合もあります。
また、不倫などの不貞行為があった場合、資産状況に関係なく、慰謝料も支払わなければなりません。一般的に100万~200万円になります」(高橋氏)
※週刊ポスト2019年8月9日号