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夫の収入にリスク集中、家庭ごと「下級国民」に転落する懸念も

「そんなの無理」という声も聞こえてきそうですが、たとえばパートで月に10万円稼げば年収120万円で、10年間働けば1200万円です。「どこのスーパーが5円安い」なんてことで必死になるより、働けば確実にお金が増えていきます。「できない」理由ばかり考えるのではなく、やってみたら案外できるはずです。

 人生はリスクの連続です。夫が病気をしたり、リストラで職を失ったりするかもしれません。1人の収入にリスクを集中させていると、ちょっとしたことで家庭ごと「下級国民」に転落してしまいます。

 令和の日本社会は、「持久戦」が待ち構えています。戦後の1947~1949年生まれの「団塊の世代」が2025年には後期高齢者(75才以上)になり、彼らが90代を迎える2040年には「団塊ジュニア」(1971~1974年生まれ)が前期高齢者(65才以上)です。

 現役世代1.5人で高齢者1人を支える「超高齢社会」では、なりふりかまわず取れるところから税・社会保険料を取るしかありません。1000兆円もの借金を抱えながらこれから20年、そんなことを続けていくのは、まるで最初から玉砕がわかっていた太平洋戦争のガダルカナルの戦いのようです。

 持久戦に負ければ、多くの国民が路頭に迷う「国家破産」が待ち構えています。もし持久戦に耐え抜いても、今よりさらに貧乏くさい社会になっているでしょう。

「下級国民」の罠にはまって最貧困に落ちてしまわないよう、一人ひとりが自分の身(家族の幸福)は自分で守るしかないのです。

◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。近著に『上級国民/下級国民』(小学館新書)、『事実vs本能 目を背けたいファクトにも理由がある』(集英社)。

※女性セブン2019年8月15日号

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