「とにかく良い意味でルーズです。店には将棋や囲碁の盤があって、パチパチ打っている客もいますし、鉄板があるので、昼間は小学生を相手にもんじゃ焼きを作ることもあるそうです。最近はタバコを吸えない店も多いですが、この店は“吸い放題”ですし、客はテレビのチャンネルも勝手に変えて、好きな番組を見ています。メニューにない焼きそばや目玉焼きを頼む客もいます」
ただしこれらはすべて“おまけ”のようなもので、潰れない最大の理由は固定客がいるからだ。
「ある時、常連客が教えてくれたのですが、近所にタクシー会社の寮があり、夜勤明けの運転手のために早朝営業しているそうです。近所に飲食店はなく、そもそも飲み屋が空いている時間でもないので、絶対に離れない客です」
一見、立地が最悪に思える店だったが、その場所で思わぬ固定客をつかんでいたのだ。かくしてMはすでに30年近く続いているが、店主いわく、「不景気で飲む人も飲む量も減った」そうで、惜しいことに「ボチボチお店を畳もうかなと思っている」そうだ。