FRB利下げ後に「いつも通り失望した」とツイート
もっとも、トランプ大統領にとって、これは、“産業界の反対でどの程度、票が減るのか”と、“中国に対して厳しい措置を打ち出すことで、産業界とは利害関係を持たない中西部の保守白人層の票をどの程度確保できるのか”の比較衡量の問題なのだろう。
中国との貿易関係を持つ産業界は反トランプが多いとみられ、それがこの件でトランプ大統領を強気にさせる要因となっているのかもしれないが、株価が下がってしまえば、話はそう上手く行かない。
FRB(連邦準備制度理事会)は7月31日、金融危機の直後以来となる利下げに踏み切ったものの、下げ幅は0.25%に留まり、さらにパウエル議長は「長期的な利下げ局面に突入するといったものではない」と発言した。これに対してトランプ大統領は直後に、継続的に利下げすると明確にしなかったことに対して、「いつも通り失望した」とツイートしている。
トランプ大統領は中国に対して厳しく譲歩を迫るような駆け引きを行い、中国が折れずに追加関税措置を実施せざるをえず、景気への悪影響が出た場合に備えて利下げを継続的に行なうという思惑であったとすれば、全体の辻褄は合いそうだ。
中国が折れる可能性は限りなくゼロに近いとみており、であるならば9月には予定通り制裁関税措置は実施され、それによる景気下支えとして再度利下げを行うというシナリオとなりそうだ。
アメリカ市場は、機関投資家が主体の市場であり、ファンダメンタルズの見通しや、需給によって株価が支配されやすい市場である。トランプ大統領は、そのファンダメンタルズや需給に直接働きかけるようなやり方で株価を操作しようとしている。これまでのところ、それが上手く行っているからこそ、NYダウ指数は7月中旬まで最高値更新ペースが続いていた。
良くも悪くも強力な指導力を発揮するトランプ大統領が次期大統領選を勝ち抜くと予想するのならば、今回のNYダウの下げは、買いのチャンスということになる。ただ、再選後はどうなるかは別問題だろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。