田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国、「中国への追加関税措置」と「継続的な利下げ」はワンセット

トランプ大統領の戦略とは(Getty Images)

 米・トランプ大統領は8月1日午後、「9月1日から3000億ドルの中国からの輸入品に対して10%の追加関税を課す」とツイートした。これにより、1日のNYダウ指数、2日のアジア主要株価指数は軒並み急落した。

 これは制裁関税の第4弾となるが、第1弾から3弾までは合計2500億ドル相当の輸入品であるのに対して、今回は約3000億ドル相当の輸入品が対象となる。前回までは、中国に対する輸入依存度の小さな製品が選ばれていたが、今回はレアアースを除いた残りのほぼすべての輸入品が対象となる見込みである。スマホ、パソコンなど、特に中国への依存度の高いものが含まれており、簡単には代替の効かないものが多い。

 日本は7月4日から、半導体、有機ELパネル製造に必須の感光材(レジスト)、エッチングガス(フッ化水素)、ディスプレイ用樹脂材料(フッ化ポリイミド)を韓国に輸出する際、個別に許可を求めることとしており、事実上、韓国への輸出規制を行おうとしているが、今回のアメリカのケースは、自らが輸入できなければ困る製品に対してわざわざ税金をかけるといった意味合いとなる。

 この件に関しては、アメリカ通商代表部が6月17~21、24、25日、ワシントンにおいて、公聴会を開いている。電機、紡績、アパレル・靴・帽子、玩具、スポーツ用品、鉄鋼・アルミ、その他非鉄金属、化学工業、食品、衣料、ゲームソフトなど多様な産業から314人の代表が参加し発言したが、この内、303人が追加関税措置に反対している。

“追加関税措置はアメリカの就業、景気に損害を与え、直接的にはアメリカの消費者にショックを与える”と、アメリカ経済界は認識している。アメリカ商工会議所(AMCHAM)は、“実施したとすれば、今後10年間で、アメリカ経済は1兆ドルの損失を被るだろう”と分析している。アメリカ小売連合会(NRF)は研究レポートを通じ、“アメリカの消費者は1年間で、衣料品購入に関して44億ドル余分にコストがかかることになる。靴類では25億ドル、玩具では37億ドル、家庭用品では16億ドル余分にコストがかかる”と影響をやや細かく推計している。

 中国のサプライチェーンは優位性が高く、代替することが難しい。川上、川下どちらも整備されている。労働力は充足しており、その上よく訓練されていて質が高い。比較的安いコストで高い品質の製品を提供することができ、その生産量も多く、アメリカ市場の需要を満足させることができる。短期的に中国の生産能力を、アメリカやその他第三国によって代替させることはできない。また、多くのアメリカ企業が中国企業と長期契約を結んでおり、既に緊密な定まった関係を築いている。新たにサプライチェーンを創ったとしても、製品検査に時間がかかり、品質に関してリスクが生じるなどの困難に直面する。大多数の業界団体、企業がこのように分析しており、この政策の実施に反対している。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。