今年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」。内容は多岐にわたるが、大きなポイントは2つだと、内閣府地域働き方改革支援チーム委員の渥美由喜さんは話す。
「1つには、時間外労働に上限が設けられたこと。これにより、過重労働はもちろん、残業もセーブする企業が増えます。つまり、今まで残業代が出ていた人は収入減に。ただし、副業を解禁する企業が増えているので、残業で空いた時間を副業に回して収入を補うことが可能になるでしょう」(渥美さん・以下同)
2つ目の改革ポイントは、「同一労働同一賃金」。これは正規社員とパートタイマーなどの非正規社員の間で待遇差をなくす取り組みで、来年度から施行される(中小企業は2021年度から)。
「この法案の背景には、人口が減少するなか、いかに働き手を確保するかがあります。人手不足が深刻な企業ほど、長く働ける人を囲い込むべく、待遇格差の解消に力を入れることになるでしょう」
サービス業や小売業などでは、働き方改革関連法が施行される前から、非正規社員によりよい環境を用意し、各種制度を整備している会社は少なくない。例えば、福岡県で食材や生活用品を宅配・店舗販売しているエフコープ生活協同組合では、約3000人の職員のうち、定時スタッフと呼ばれる非正規社員の評価、賃金、福利厚生制度は正規社員と同一で、労働契約も無期雇用となっている。他にも、クレジットカード会社のクレディセゾンは、社員区分を撤廃し、全社員を正社員化。有期雇用者(非正規雇用)約2200人が無期雇用の正社員となり月給制となった。
今後はどこの企業でも、パートタイマーも必要な戦力とみなされ、賃金は上昇する見込み。非正規社員にも退職金制度を導入したり、子供手当を支給するような企業も増えてくるだろう。さらに、女性の活躍が推進されることも相まって、パートから正社員化のみならず、管理職就任も夢ではなくなるのだ。
※女性セブン2019年8月22・29日号