「父が倒れてから自宅介護を続けたのですが、介護にかかる費用はすべて実費で現金払いしていました。仕事から帰って食事をしていると、母が『私たち路頭に迷うんじゃないかしら』と不安そうに言うんです。
ずっと後になって介護保険のことはたまたまテレビのニュースで知り、政伸も走り回って調べてくれました。主治医に相談したら東京・世田谷区のケアマネジャーさんを紹介されて。『うちの父も介護保険を使えるんですか?』と聞いたら、『ええ、使えます』と言われました。
税理士さんたちに『どうして教えてくれなかったんですか』と聞いたら、『有名なかたに言うのは失礼かと思って』と言われて…(苦笑)。階段の手すりの設置から介護ベッドやトイレの手すりまで、こんなものにも保険サービスが使えるのかと驚きました」(政宏)
介護が始まってから10年近くの期間を、すべて実費でまかなっていた不安は大きく、寿美は“貧困妄想”に襲われるようになり、費用不足に備えるため福岡と都内のマンションの売却もしていたという。政宏は何度も「介護保険さえ、最初から知っていれば」と繰り返した。
相続コーディネーターで「夢相続」代表の曽根恵子さんは、「決して有名人だけの特別なケースではありません」と指摘する。
「一般のかたでも、家に引きこもっていたり、家族だけで介護をしていると、介護保険制度を知らない人はいます。介護保険のほかにも自治体によるリフォーム助成金など、介護にはさまざまな公的支援があります。介護が必要になったら、まずは役所や地域包括支援センターでどんな支援があるのか尋ねてください」
※女性セブン2019年8月22・29日号