今年の上半期もさまざまな事件があった。コカイン使用の疑いで逮捕されたピエール瀧の裁判では、裁判官の補充質問や“劇場型”な説諭が大きな話題になったが、事件の行方だけでなく裁判官の説諭を聞くのも、傍聴マニアにとっては興味深い点だという。
なかでも、“説諭のスター”と傍聴マニアの間で圧倒的な支持を受けているのが、長野地裁の室橋雅仁裁判官だ。「この人の説諭を聞きたい!」と裁判所に通う傍聴マニアもいるほど人気が高い室橋雅仁裁判官は、いったいどんな言葉を語っているのか。
裁判ウオッチャーで芸人の阿曽山大噴火が語る。
「室橋裁判官は29才で法曹界に入った人で、裁判官になる前は別の仕事をしていたんです。そのため、以前、自分はこんなことをしていたと、身の上話をすることがあります。裁判官がプライベートの話をするだけでもレアなのに、室橋裁判官は過去にあった自分の恥ずかしいことまで話すんですよ」
たとえば、2007年にはパチンコで大当たりした女性を尾行し、ひったくりを働いた被告に対し、補充質問で《私もパチンコに熱中していたことがありました。父親に借金までしてパチンコに負けた時、おやじが苦労して稼いだ金で、こんなことをしていいのかと思い、それから20年、一度もパチンコはしていません》と過去を告白した。司法ジャーナリストの長嶺超輝さんが語る。
「裁判官も、生まれた時から完全無欠ではないと話すことで、被告人の心を開かせる。室橋裁判官にはそんな一面があります。だから以前、覚せい剤を使用した罪で逮捕された元俳優の高知東生さんの裁判を室橋裁判官が担当すると知った時は、その言葉に注目していました」