そして2016年9月15日、高知被告(当時)に有罪判決を下した時の説諭が以下の言葉だ。
『事件であなたが失ったものは大きい。だが事件後、10代からの薬物使用を素直に話したのは更生の思いが後押ししたと思う』
これには傍聴マニアからも歓喜の声が上がったという。
他の事件でも、室橋裁判官は印象に残る言葉を残しているので、紹介してみよう。
35才、住居不定、無職の男がコンビニで店員にカッターナイフを突きつけて、現金を要求。だが、店員は応じず、強盗未遂となった事件に対して、以下のような発言をしている。
『実は私も前の仕事を辞め、親に言えなくて、スーツを着て、朝出て行って、最後は隅田公園にたどり着いていました』
調書には仕事を辞めてから、隅田公園をふらふらしていたと書かれていたという。
「それに対し、室橋裁判官は自分も同じように親に言えず、仕事を辞めた時に隅田公園に行っていたという過去を告げたのです。しかも、《私は(ふらふらした生活を)3か月続けていました》とまで。
さらに、《人の人生なんてわからないですよ。私も裁判官になったのは30才過ぎてからなので、あの頃は、ここで人を裁いているなんて思いませんでした》と、言いづらいことをさらりと告げるんです」(阿曽山)
事件ばかりがクローズアップされ、担当裁判官が注目されることはほとんどない。
「裁判官は無名の公人。新聞記事を見ると、その事件の担当裁判官名も書かれています。たとえ傍聴できなくても、誰が担当したのかを知った上で事件を見ると、また見え方が変わり面白いと思います」(同前)
裁きの場である法廷では、個性あふれる裁判官の名言を聞くことができるようだ。
※女性セブン2019年9月12日号