根本匠・厚労相は5年に1度の年金財政検証の発表会見で“100年安心”を強調したが、財政検証に並んだ小難しい専門用語を読み解いていくと、そのカラクリが見えてくる。
財政検証には、厚労省がこれから進めたいと考えている年金制度改悪の内容が先回りして盛り込まれる。「オプション試算」と題されたパートがそれにあたる。「パート妻を主な標的にした厚生年金への加入義務強化」と同じくオプション試算に盛り込まれたのが、「基礎年金の加入期間の延長」「厚生年金の加入年齢の上限の引き上げ」だ。
ここでは、「長く加入できるようになると、将来の年金額が増えますよ」という“バラ色の嘘”が示されている。
現在、基礎年金の加入義務は40年(20~60歳)だが、これを45年(20~65歳)に延ばした場合、また、厚生年金の加入年齢の上限を70歳から75歳に延ばした場合のそれぞれで、財政検証の資料では、“所得代替率が上がる=もらえる年金が増える”とPRしている。
さらに、年金受給開始年齢を後ろ倒し、毎月の受給額を増やす「繰り下げ受給」を組み合わせている。ご丁寧に、現行制度では繰り下げは最長70歳までのところ、「75歳まで繰り下げ」が可能になった場合を想定。
つまり、「75歳まで働いて厚生年金に加入し、併せて75歳まで年金受給を遅らせた場合」のシミュレーションを示しているのだ。この場合、所得代替率は100%前後に達するという。夫婦2人で現役サラリーマンの収入と同等の額の年金を受け取れるのだから、まさに“超バラ色”だ。ここに嘘がある。
「加入期間が長くなれば、それだけ保険料を払う期間が長くなる。それなのに、財政検証には、長く加入して受け取れる額がどれだけ増えるか(所得代替率が上がるか)は記されているが、加入延長による保険料負担増の数字は示されていない」(社会保険労務士の北山茂治氏)