「年金制度はおおむね100年間は給付と負担が均衡し、持続可能なものとなる」―─根本匠・厚労相は年金財政検証の発表会見で“100年安心”を強調した。真っ赤な嘘である。財政検証に並んだ小難しい専門用語に騙されないよう、その「嘘」を暴いていく。
現在の年金制度の基礎を作ったのは2004年の年金改悪だ。当時、小泉純一郎首相は国民に、「年金額は将来にわたって現役世代の給料の50%より下がらないことを保証します」と約束した。
夫婦2人の年金合計額が現役男性サラリーマンの平均給与(手取り)の何%かを示すのが所得代替率で、以来、これを50%以上に保つことが年金制度の目標になっている。今回の財政検証では物価や賃金上昇率が違う6つのケースで試算。経済成長が実現すれば、ギリギリ「所得代替率50%」を維持できるとされている。
財政検証の第1の嘘は、この「所得代替率50%を維持できているから安心」という主張だ。
厚労省の発表資料をもとに具体的に比較してみる。現在(2019年)の現役男性サラリーマンの手取り収入は月額35万7000円、それに対して今年から年金支給が始まった夫婦の年金合計額は22万円。所得代替率は約62%となる。
2047年になると、物価上昇(年率1.2%)、賃金上昇(同1.1%)などで現役男性の手取りは月47万2000円、夫婦の年金額は24万円になり、「所得代替率50.08%」と試算されている。
「騙されてはいけません」と指摘するのは年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏だ。
「試算の数字だけを見ると年金額は22万円から24万円に増えると誤解してしまう。しかし、62%あった所得代替率が50%水準に下がるということは、年金が約2割減らされるということです。安心どころではありません」