そうした身内意識が強い場で、なんとなく疎外感を感じ続けてきたB氏だが、そもそも祭りに参加するようになったいきさつは何か。
「当初、妻からは『祭りなんかに参加してもロクなことはないからやめなさい』と言われたのですが、やはり私もここに骨を埋める覚悟をしたので地元に溶けこまねければ、と参加を決めました。もちろん最初からアウェイ感はありましたが、運営に協力し、一緒に神輿を担げば、いつしかその努力は認めてもらえると思ったのです。しかしそれは甘かった。私はいつまで経ってもヨソ者だったのです」
B氏がもう参加しないことを決意したきっかけがあった。祭りには、気性の荒い人々も多数参加しており、酒を飲んでケンカになることもあるという。昨年の祭りでも口論が発生したため、B氏は「まぁまぁ、そう熱くならないで、ここは落ち着きましょうよ」と仲裁に入った。すると、口論をしていた男性からこう言われた。
「うるせぇよ。お前みたいなヨソ者は黙ってろ!」
こうなるとなぜか口論をしていた者同士が突然結託し、B氏に対して「お前はうるせぇんだよ!」「勝手に口出しするんじゃねぇ!」などと言いながらB氏を責め立てる。そうこうしているうちに2人の口論は終わり、あとは仲良く酒を飲み始めたそうだ。
こんな経験をしただけに、B氏は「もうやっていられない」とばかりに、祭りから離れることを決意した。妻からは「だから最初から言ってたじゃない。ロクなもんじゃないって」と言われた。B氏は悔しそうにこう語る。
「私はヨソ者なだけになんとか地元に溶け込もうとしました。それでも受け入れてもらえないんです。祭りを羨ましいと思っている人は、一度体験してみるといいですよ。いや、ヨソ者が体験できるかは分かりませんが、ドロドロした人間関係や序列を見せつけられることでしょう」