厚生労働省は8月23日、政府が「老後資産形成」のために加入を勧める個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能な期間(20~60歳)を65歳までに延長するなどの制度見直しを議論し始めた。
iDeCoは掛け金が全額所得控除の対象となり、運用益は非課税で、税優遇が手厚いのが特徴だ。しかし、現在は60歳までしか加入できない。60~64歳の就業率が8割近く(2018年)となり、65歳以上も仕事を探す人が増加している今、現状の年齢制限に違和感を覚える人も少なくない。
ただし、同じく個人向けの資産形成方法として注目されるつみたてNISA(少額投資非課税制度。最長20年間、運用益が非課税)には年齢による制限はない。
投資・運用ではなく、働き続けることで老後の安定収入を確保できれば、それに越したことはないが、仕事探しにも“壁”が現われてくる。
人材紹介会社CEAFOM社長で『定年前後の「やってはいけない」』(青春出版社)の著者・郡山史郎氏が語る。
「現在は売り手市場で求人は無数にあるが、50歳以上のものは非常に少なく、55歳以上になるとさらに減る。法律上、求人には年齢制限を記載してはいけないことになっているが、企業側は紹介会社に『当方の希望は~』などと年齢の条件を出してくるのが実情です。
60代以上の方が不採用になるのは面接によるものではなく、年齢によって書類段階で落とされてしまう実態があります。紹介会社に頼るのではなく、知人の伝手を頼るなど、自ら再就職先を探す努力も必要です」
※週刊ポスト2019年9月20・27日号