たとえば、今年65歳の夫婦の年金は月額22万円から、70歳になる5年後には21.5万円へと月5000円(年6万円)減らされる。10年後には月1万4000円減、15年後には月2万円減と毎年減額幅は大きくなり、90歳になる2044年には月額2万9000円(年約35万円)も減らされる。
66歳以上の年金受給世代の将来の年金額は、厚労省の財政検証資料では試算されていないが、計算していくと65歳世代と同程度の金額が減らされることがわかる。
この表からあなたの“生涯年金額”と、老後30年間でもらえたはずの年金がいくら減らされるかも推計できる。
夫婦の年金が22万円の65歳の世代は、年金額がそのままであれば95歳までの30年間の“生涯年金額”は7920万円のはずだったが、そこから約680万円もカットされてしまう。これが最も減額が大きい現在50歳の世代になると二重の減額によって880万円も少なくなる(表参照)。
当然、その分、老後資金の不足額は大きくなることを覚悟しなければならない。
今年6月の金融庁報告書では、公的年金だけに頼って暮らすと毎月5万円の赤字が生じることから、「老後30年間で、2000万円不足」と弾き出しているが、これはもらえる年金額は一定という前提だった。
しかし、現実には厚労省自ら年金を毎年減らしていくことを明かしているのだ。現在65歳の世帯ならざっと2700万円、50歳世帯は将来的に2800万円不足すると考えておくべきだ。
※週刊ポスト2019年9月20・27日号