厚生労働省が8月に発表した年金財政検証は、「年金の未来予想図」だ。「現行の年金制度は、一定の経済成長などが進めば将来的に夫婦の年金額が現役サラリーマンの平均手取り給料の50%を割り込むことはない」──それが今回の検証の結論だった。
だが、その説明にはトリックがある。年金は「もらい始める前」と「もらい始めた後」の2段階で減らされていく。現役世代の保険料負担を減らすため、賃金・物価の上昇に対し、年金の上昇が抑制される仕組みがあり、そのため実質的に年金額が目減りしていくのだ。
65歳の受給開始時点の年金額は毎年、少しずつ減らされる。そのため、若い世代ほど安くなる。厚労省の「現役サラリーマンの給料の50%が維持される」というのは、この受給開始時点の年金額のことだ。
それに加えて同様に、受給開始後も、毎年、年金額が減っていく。だから、いずれ50%を割り込むのは確実なのである。
注意したいのは、そうした二重の減額は、現行制度において確実にやってくる未来であり、それとは別にさらなる改悪が待ち受けていることだ。
「年金大減額時代」に備えるために、まず、すでに年金を受給している世代も、これから年金を受給する世代も、自分の年金が何年後にいくらになるのか、その金額を把握しておく必要がある。
財政検証の付属資料には、今年65歳で年金受給が始まった標準モデル世帯(40年間の平均賃金で厚生年金に加入した夫と専業主婦の妻)の「月額22万円」を基準に、年齢別の「夫婦の年金額」が65年先まで1年刻みで試算されている。
表は厚労省試算のうち、現在40歳から65歳の人の年齢別年金額を5年刻みに簡略化したものだ(現在の物価、賃金水準に換算した実質額)。