ポイントは、働きながら年金を受給すると、給料との合計額が一定を超えたところから、支給がカットされていく「在職老齢年金」だ。高齢者の労働意欲を高めるために、厚労省は廃止・縮小を検討中で、財政検証にもその試算が盛り込まれた。
65歳以上は、カットになる基準が「合計46万円」と高額になるため比較的対象者が限られるものの、数ある改悪のなかで唯一の“アメ”であることは間違いない。「年金をもらいながら、働けるだけ働く」が、これからは有力な選択肢となるのだ。
一方、厚労省が推奨する「75歳まで働き、75歳から年金受給」を選択すると、前述のように60~70代前半は夫の給料と貯金の取り崩しでしのぎ、75歳以降に赤字を埋めていくことになる。どちらが安定した老後資金計画かは明らかだろう。
給料と年金の総収入を比べても、男性平均寿命の85歳時点で年金+給料の“ダブルインカム”を選んだ方が有利だ。前出・北村氏が語る。
「厚労省は保険料を長く支払わせ、トータルの支給額も少なくなる75歳受給を普及させようという考えのようですが、後期高齢者になってから高額の年金をもらっても使いようがないケースが多いのが現実です」
※週刊ポスト2019年9月20・27日号