今年6月、“年金だけでは老後資金は2000万円不足する”という金融庁の報告書が明らかになり、一気に年金不安が広がった。不安に立ち向かうためには、自ら年金を増やすしかない。
そのためにはまず、年金の受け取りタイミングが重要となる。
年金は原則65才で受け取れるが、それより早く受け取り始める「繰り上げ」受給と、65才より遅くもらい始める「繰り下げ」受給が選べる。
繰り上げは、早くもらう代わりに、1か月ごとに0.5%ずつ、1年で6%の減額となる。仮に最大5年間繰り上げて60才から受け取ると、30%の減額となる。
一方、繰り下げは、遅くもらう代わりに年金額が増える。比率は繰り上げよりも高く、1か月ごとに0.7%ずつ、1年で8.4%の増額だ。こちらも最大5年間繰り下げて70才で受け取ると、実に42%もの増額になる。
たとえば今後、経済成長が進まない前提だとすると、現在45才で年収700万円の人の場合、65才で受け取り始めた場合の年金額は夫婦で月額20.9万円。仮に70才まで繰り下げると、約29万6000円と月約9万円も増える計算だ。そこまで繰り下げることができれば、増えたお金の分だけ心強い。
しかし、繰り下げ受給は長生きしてこそのメリットである。70才まで繰り下げて、その後10年も生きられなければ逆に損だ。「年金博士」として知られる、ブレインコンサルティングオフィスの北村庄吾さん(社会保険労務士)が話す。
「繰り上げか、繰り下げかの判断は自分が長生き家系かどうかが参考になります。また、老後資金がどれだけあるか、何才まで働けるかといった家計の状況によっても変わるでしょう。一般的には、女性の方が男性より寿命が長いため、夫の年金は65才、または家計次第では繰り上げで年金を受給して、妻の年金だけ繰り下げるという方法もあります」(北村さん・以下同)