東大卒YouTuberが経験した挫折
優秀な頭脳を背景に、YouTubeの世界で頭角を現す若者はほかにもいる。クイズ動画を提供するチャンネル「QuizKnock」を主宰する伊沢拓司の姿は、放送中のクイズ番組『東大王』(TBS系)にも出演しているから、すでにお茶の間でもおなじみだろう。
東大生を中心にした若者たちで構成される同名の会社組織を今年、設立したばかりだという。伊沢が言う。
「テレビとYouTubeでは、別の作り方をしなければと思っています。テレビは幅広い人が見ているので極端な難問は出せませんが、YouTubeならできる。演者が制作者も兼ね、視聴者からの反応がダイレクトにあるところに手ごたえを感じています。自分たちのことはYouTuberだとは思っていますが、それだけではなく、発信のひとつの手段だとも思っています」
若きリーダーとして順風満帆なスタートを切ったかにみえる伊沢にも、挫折があった。2017年にQuizKnockを立ち上げてから半年の間は「死ぬような思いだった」と話す。
「立ち上げ当初の盛り上がりが落ち着き、人が減っていった。お金はどんどんなくなっていき、インターネットも電気も止められ、家賃に困ることさえあった。東大の卒業式ではほとんどの卒業生がガウンと角帽をつけるのですが、それを借りるお金がなくて参加しませんでした。お世話になった教授に挨拶だけしに行って、卒業の感傷に浸るような暇も余裕もありませんでした」
これらを聞く限り、経営者やサラリーマンとして成功することと、YouTuberとして大成することは、それにかかる労力に差はないだろう。
ただし、サラリーマンが抱える大きな問題が「好きなことをやっていない」ことなのに比べ、YouTuberは興味の対象にダイレクトに突き進めるという違いはある。何かと閉塞的な時代に生まれた子供たちが、好きなことをして輝く彼らに憧れるのは当然のことなのかもしれない。
※女性セブン2019年9月26・10月3日号