10年ほど前に突如現れた職業「YouTuber」は、今や子供がなりたい職業の上位だ。人気YouTuberたちは、どのようなキャリアを持っているのか。
自宅の一室で電子ピアノを巧みに操り、米津玄師の『Lemon』などのヒット曲からコンビニの入店音まで、あらゆる楽曲を楽譜なしの“耳コピ”で演奏し、即興でさまざまなアレンジを加えたり、自作の歌を弾き語る。そんな動画が人気を集めるYouTuberの鈴木ゆゆうた(31才)の勤務先は、かなりの“ブラック企業”だという。
「多い時で月に300時間もの残業を強いられる職場なんです。さらに上司から面と向かって『死ね』と罵倒される、典型的なブラック企業。そんな中でも睡眠時間を削ってピアノを弾き、歌を歌って動画を編集し、公開し続けたんです。好きなピアノと歌で楽しんでもらえるし、何より返ってくるコメントがうれしかった。それが投稿を続けるモチベーションになったんだと思います」(ゆゆうた)
鍵盤の上を縦横無尽に指を走らせながら歌うゆゆうたの顔は、本当に楽しそうだ。音楽の技術も高く、歌詞はユニーク。サラリーマンという昼間の“苦行”から解き放たれ、本来の姿に戻ったかのよう──モニターに映し出される彼の姿は、見る人を笑わせ、元気をくれる。
ゆゆうたのように「ブラック企業」での勤務を余儀なくされることは、今の若い社会人たちにとっては他人事ではない。かといって、「ブラックだから」といって気軽に転職もできないし、「ホワイト企業」に巡り会える保証もない。我慢して耐えるほかない毎日が続く中、「自分らしくいられる世界」としてYouTubeがあるというわけだ。
5才からピアノを習っていたと話すゆゆうたが、動画の投稿を始めた頃を振り返る。
「投稿自体は2007年、ニコニコ動画で始めたのが最初です。有名アニメの曲をアレンジしてピアノで弾いた動画などを上げていたんですが、まったく再生数が伸びなくて8年も放置してしまった。ところが2015年頃になると楽曲アレンジの動画が人気を集め始め、ブームに便乗しようと新たに投稿したところ、たくさんの人に見てもらえるようになったんです」