もっとも、アフリカ豚コレラ自体は、4月時点で31省・直轄市・自治区の全てで感染が確認されたのをピークに、その後は縮小傾向となっている。農業農村部は9月9日、「これまでに処置を行ったアフリカ豚コレラの件数は153件であるが、今年に入って発生したのは、54件であり、4月を除けば発生件数は1桁台である。現在、29省・直轄市・自治区において疫病区域指定は解除されており、養豚事業は正常に戻りつつある」と発表している。
ワクチンはあるが特殊な製法なので生産量は少ない。新薬開発が行われているが、有望なものは、まだ実験段階をようやく終えたところである。当局による徹底した感染防止対策が機能したことで、何とか蔓延が食い止められているといった状態である。
子豚が食肉となるまで4~6か月が必要であり、一度、減少してしまった生産量を回復させるのには時間がかかる。食肉や子豚を輸入すればよいのだが、米中貿易戦争の影響で、アメリカからの供給が制限される状況である。豚肉の需給逼迫が正常化するには、まだ半年以上かかりそうである。
日本株に関しては、豚コレラ関連として、より安全性の高い食肉などを生産している秋川牧園(1380)、鶏肉国内大手のアクシーズ(1381)などが注目されているようだが、豚肉価格が上昇した場合の企業業績への影響が見通しにくい。逆に、コスト高に見舞われそうな食品メーカーなどへの悪影響も懸念されるのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。