定年後世帯の大きな出費の原因になり得るのが、「広すぎる家」だ。夫婦2人と子供たちのためのマイホームは、大学を卒業して子供たちが独立すれば部屋が空くことになる。ファイナンシャルプランナーの小谷晴美氏が語る。
「歳を重ねた夫婦2人では部屋の掃除や庭の手入れも行き届かないし、電気代や固定資産税も、家が広ければ余計にかかってきます。古くなっていく自宅の修繕費なども馬鹿になりません」
不動産総合情報サイト「アットホーム」のアンケート調査によれば、築30~34年の戸建てにおける修繕費の総額が平均495万円だったところ、築40~44年の物件では平均602万円だった。同じ家に10年長く住むと100万円単位で修繕費がかかってくるのだ。
「そうしたことを考えれば、古くなり過ぎる前に自宅を売却し、夫婦2人にとってちょうどいい広さのマンションに移り住む選択肢が有力になってくる。
理想的なのは、定年の少し前から引っ越し先を探し始め、60歳定年の退職金でローンを完済。その状態で自宅を売却し、その資金でマンションを買うという順番になります」(小谷氏)
引っ越し先を選ぶ上で重要なのは立地だ。定年後の田舎暮らしに憧れる人は少なくないが、注意が必要だ。
「地方の過疎地へ移り住んでしまうと、買い物できる場所が限定され、価格も高くなりがち。自家用車が必需品となって、ガソリン代などの負担も大きくなる。一方で都心のど真ん中だと物価が高くなるので、地方中核都市、ないしは首都圏郊外が望ましいでしょう。駅までの近さや買い物環境をきちんと調べた上で、引っ越し先を定めていくのが鉄則です」(小谷氏)
住まいの売却や購入は、額が大きいだけに事前に計画を練ることが欠かせない。
※週刊ポスト2019年10月4日号