資産分布グラフはまさに現代社会を映しているというのは、著書『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題の作家の橘玲さんだ。
「かつて『一億総中流』といわれた時代には、平均資産額付近に最も多くの人が集まり、そこから貧しい人も豊かな人も徐々に減っていく分布でした。別掲図でいえば、真ん中あたりが凸状になっていたイメージです。
しかし、現在ではグラフ左端にピークが来て、右に向かって急減していきます。その変化の理由はこうです。かつて平均より上の『中流の上』だった層は、余剰資金を運用して富を蓄積して、『上級』に向かっていきました。一方で、平均より下の『中流の下』だった人たちは運用に回すお金もなく、カツカツで家計をやりくりしているうちに『下級』へと転落していった。
最初はたいした違いがなくても、これが何十年と続いた結果、平均値あたりを中心とした富の分布は跡形もなく崩れ、大勢の下級国民と、大きな富を保有する少数の上級国民に二極化し、貧富の差が大きく開いてしまったのです」
残酷なことに、この傾向はもはや後戻りできないという。
「平和で安定した資本主義社会では、富める者はさらに富み、中間層がささいなきっかけで転落して、貧しき者になる傾向は必然的に進んでいきます。戦争や革命でもない限り、格差拡大の流れは変わらないでしょう」(橘さん)
※女性セブン2019年10月10日号