見る方は気楽だが、やる方は大変なのが、職場の宴会での一発芸。令和に入った今、滅びつつある前時代の文化かと思いきや、某大手企業では未だに忘年会で新入社員が一発芸を披露する風習が残っており、新人たちが頭を悩ませているという。その会社で勤続24年目のYさん(男性・40代)がいう。
「私が勤めているのは、CMで企業名が流れる規模の会社ですが、“飲みニケーション”が異常に盛んで、忘年会もきっちり盛大に行われます。最近ではアルハラ(アルコールハラスメント)の問題があるので、無理に飲ませるような行為は見かけなくなりましたが、大変なのが宴会芸の準備です」(Yさん。以下同)
今や“飲み会は業務なのか”といった議論も登場し、職場の飲み会不要論もあるが、「業績が良くても悪くても、忘年会は絶対やる」というYさんの会社。一応、一発芸をやらせる建前は用意されているようだ。
「ウチの会社は接待が多いので、『クライアントが望めば、何か芸をやるぐらいの根性は必要だ』というのが、やらせる側の理屈です。接待も大切な業務ですし、酒も飲めない、カラオケも歌えない、面白いこともできないでは戦力になりませんから」
とは言うものの、Yさんの会社はトップをはじめ、役員は体育会出身者ばかり。良くも悪くも上下関係に厳しく、何かやれと言われれば、返事は“ハイ”以外はあり得ず、一歩間違えばパワハラだ。それでも新人たちは代々、一発芸を披露してきたが、ここ最近、新たな潮流が生まれているという。
「私が新人の頃は、ハダカになるような下品なものや、一気飲み、大食いなど、芸とは言えない荒っぽいネタが主流でした。しかし、事故や問題が起きるとマズいということで、ここ数年、“本物の芸”で勝負する流れが強まっています。昨年は、プロ顔負けの手品を見せる者、野球のバットを脚で蹴って折る者が現れ、大喝采を浴びました」