内閣府「令和元年版高齢社会白書」によれば、総人口の減少と高齢者の増加によって日本の高齢化率は上昇を続け、2035年には32.8%に達する。社会全体が現在よりさらに老いてゆくなか、高齢者を取り巻く環境はより厳しさを増し、現在の“当たり前”が存在しなくなるケースも出てくる。とりわけシニアと密接に関わる「介護」「老後生活」「終活事情」はどう変わっていくのか。
「介護」の危機は深刻だ。東京商工リサーチは今年7月、上半期の訪問介護事業者などの倒産件数が、介護保険法が施行された2000年以降で年上半期最多を記録したと発表した(2019年上半期「老人福祉・介護事業」の倒産状況)。
厚労省の2015年の推計では、2025年度にヘルパーを中心とする介護人材が37万7000人不足すると予測されている。『介護職がいなくなる』(岩波書店刊)の著者で淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏が指摘する。
「団塊世代が85歳を超える2035年には、その半数以上が要介護認定を受けて何らかの介護が必要になるとされている。しかし、その数を支えるだけの介護職を確保できる見込みは少ない。後期高齢者が介護保険の限度額内で訪問介護のヘルパーを呼んでも、人手不足を理由に断わられることが日常茶飯事となる」
しかし、自力で生活することも難しい。農林水産政策研究所の試算によれば、2025年には自宅から500メートル以内に生鮮食品店がなく、自動車を所有しない65歳以上の高齢者が598万人に達するという。全高齢者の人口約3600万人の6分の1に相当する人々が“買い物難民”になりかねない。その10年後の2035年にさらに深刻化するのは確実だ。