東京オリンピック前の特需が終われば、不動産価格は下落すると予想する声が多いが、すでに都心周辺では徐々に価格下落が始まっている。はたして今後の首都圏マンション相場はどうなるのか。経済コンサルタントの大前研一氏が分析する。
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不動産経済研究所の調査によると、8月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション発売戸数は前月比5.8%減の1819戸だった。前年同月比は21.1%増で8か月ぶりに前年実績を上回ったが、これは東京オリンピック・パラリンピックの選手村を転用するマンション「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ/中央区)の第1期第1次分600戸が販売された影響が大きかったという。
「HARUMI FLAG」は最高倍率71倍、平均倍率2.57倍だったが、申し込みが入らなかった住戸もあった。銀座まで約2.5km、東京駅まで約3.3kmという好立地の巨大プロジェクトにもかかわらず「即日完売」とならなかったのは住宅需要の低迷を如実に物語っていると言えるだろう。
もともと東京オリンピック・パラリンピック前の特需が一段落すれば、不動産相場は下落するとみられていた。すでに都心周辺のドーナツ圏は徐々に下がっているが、今後は山手線内も下落していくと予想される。
その大きな理由は、容積率の緩和である。これは私が長年、最も有効な景気刺激策として提唱してきたことだが、2014年に耐震性不足マンションを建て替える場合の容積率緩和許可制度、2016年に宿泊施設用地の容積率緩和制度などが創設されたため、それがようやく現実のものになりつつあるのだ。
私は10月1日発売の私の新刊『「国家の衰退」からいかに脱するか』(小学館)でも、東京を先進的なメガシティへ大改造するために容積率を緩和すべきだと主張している。容積率は“隠れ資産”であり、容積率を増やせば、おのずと資産価値が増える。