大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

首都圏マンション相場はまだ下がる、これだけの理由

 東京の場合、都心部でも今なおペンシルビルや低層ビル、一軒家がたくさんある。それらをまとめて買い上げて(いわゆる地上げ)高層マンションにすれば、同じ面積の土地に何倍もの人が入ってくるので、外部経済(資本)を取り込める。いわば「空から富が降ってくる」のだ。この乗数効果は極めて大きい。

 すでに中央区の馬喰町は新しいマンションが建ち並んで問屋街だった町並みが様変わりしているし、今は千代田区の秋葉原や岩本町などの神田地域が再開発で建設ラッシュだ。東京駅の八重洲側には三井不動産などによる高さ約240m~250mのトリプルタワーが2022年から順次完成する。さらに、日本一となる高さ約390mの超高層ビルを中心とした三菱地所の「東京駅前常盤橋プロジェクト」、高さ約330mの超高層ビルを含む森ビルの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」も始動している。都心部では今後も住宅やオフィス、商業スペースが大量供給されるのだ。

 したがって、これから不動産価格はいっそう下落せざるを得ない。たとえば、私が住んでいる千代田区番町エリアの場合、近年のマンションの価格はピーク時で1平方メートルあたり単価が約200万円まで上昇したが、現在は約150万円に下落している。

 東京オリンピック・パラリンピックの特需が終われば建設工事の人件費や資材のコストも下がってくるので、それと併せて容積率緩和のメリットを最大限に活用すれば、おそらくマンションの1平方メートルあたり単価は都心部までの通勤時間が15分くらいの便利なエリアでも120万円前後に下がるのではないかと思う。となると、ここでいったん住宅需要が小休止したとしても、東京オリンピック・パラリンピック後は再び大々的な都心回帰ブームが起きるはずだ。

※週刊ポスト2019年10月11日号

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