PTA活動の改革の難しさが、近年論じられている。特に、歴史ある私立幼稚園では「これまでのやり方を変えるべきではない」という声が少なくないようだ。ライターの高木希美氏が、その一例をリポートする。
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東京在住の30代女性・倫子さん(仮名)は初めて、子供が通う名門私立幼稚園のPTA役員になりました。彼女はもともと司会業などをしていて話がうまく、今も休日は結婚式の司会を引き受けるなど、子育てに無理のない範囲で働いています。そんな倫子さんは、在園中に一度はPTAの役員をやらなければならないという“ルール”があったため、思い切って会長に立候補しました。すると、いきなり驚かされたそうです。
「幼稚園のPTAなのに、会議や打ち合わせに出るときは子連れ不可なんです。会議はたいてい平日で夫は仕事だから、夫には預けられません。周囲に小さい弟や妹がいる場合はどうすればいいか聞いてみると、『実家に預ければいいじゃないですか』と、近所に実家があっていつでも預けられることが前提のような仕組みでした。それができない人は、シッターを依頼するなどしなければいけないんです」(倫子さん)
とはいえ平日の役員会も「多いときは週1回」などかなりの頻度で開かれていたため、毎回シッターに依頼するのは大変です。そこで倫子さんは、役員会や打ち合わせの回数を減らして、チャットツールやインターネット上の共有フォルダなどを利用してコミュニケーションを取ったほうが効率的だと改革を提案しました。
それが“地獄”の始まりでした。
ある日、倫子さんのもとに1通のLINEが届きました。それは、幼稚園のママたちが参加するLINEグループへのお誘いでした。何も考えずに参加すると、20人くらいの幼稚園ママから、一斉に「PTA改革」への批判が送られてきたそうです。
「うちの幼稚園は由緒ある幼稚園だから、スタイルを崩さないようにするべき」
「うちは旦那も私もこの幼稚園出身だから」
「私は特に批判があるわけじゃないけど、ちょっと心配している人が多いから伝えただけです」
「あんまり意見とか言うと、OGがなんていうかわからないから気をつけたほうが良いよ」
「子供のためのPTAなんだから、それに時間を使うのは無駄じゃないですよね?」
「私は子供3人いるからあなたよりPTAに詳しいんですが、今までのやり方で問題はなかったと思います」
「今までのスタイルを崩したい人なんて聞いたことありません」
「協調性を持ってほしい」
「伝統を大切にしてほしい」
「下の子を預けてでも役員はやりがいのある仕事。それができないって、ラクしたい人なんでしょうか?」