間接的な批判もあれば、ストレートに倫子さんの改革に異を唱えてくる人もいます。PTA改革をしようとすると批判が巻き起こるのはよく聞く話ですが、この幼稚園の場合、時折、「由緒ある」「伝統を大切に」といった言葉が目につくのが特徴でしょう。「名門」であることが、ママたちの改革への拒否反応につながった側面があると考えられます。
倫子さんはしばらくの間、屈する姿勢なく改革を進めようとしましたが、だんだん陰湿ないじめに発展したといいます。挨拶無視、役員会でリアクションがない、根も葉もない噂を流される──。中には「改革はいいと思うよ」と直接伝えてきてくれる人もいましたが、そうした人は大きな声では発言してくれませんでした。
同じクラスのママが「色々大変って聞いたよ、大丈夫ぅ?」と味方風に話しかけてきたときは、「倫子さんって仕事もしながらPTAもしてて偉いよね。オシャレだし。だからみんな嫉妬してるんだと思うよ。服が目立ってるんじゃない? 服装から変えてみたほうがいいんじゃない?」と悪気がなさそうに批判してきたそうです。名門幼稚園では、紺色ベースのワンピースやパンツスーツが“ママのあるべきスタイル”だから、オシャレな倫子さんは“伝統を崩している”とみられたのかもしれません。
そうして4か月。ついに倫子さんは会長を辞めることにしました。というのも、ずっと転園を考えていたインターに空きが出たので、タイミングを逃さず受験して転園ができることになったからだそうです。倫子さんが言います。
「私には、あの幼稚園のPTA改革なんて無理でした。きっとあのPTAでは伝統を守って『自己犠牲』を続けることが美しいのでしょうね……」