「お金」より「心」を大切にする気質
最後はアメリカ。40代女性の医療従事者・Gさんが、医療系の国際学会に出席するためアメリカに行ったときのことだ。ある日本人気質が絶賛されていたと話す。
「ディスカッションの後で医師たちが雑談をしている時、日本人医師は精神論の話をすることもしばしば。アメリカでは、医者になった理由を『お金のため』と堂々と言う人が多いのですが、ある日本人医師が『確かに無給ではできないが、言葉には“言霊”がある。お金目的ということが第一にくると、医師として大切なことが置き去りになるので、僕らは絶対そうとは言わない。あくまでも誇りや信念のもとでやっている』と語ると、拍手が巻き起こりました」
Gさんは、アメリカと日本の労働観や保険制度の違いも背景にあるのでは、と推測する。
「日本人医師は、患者の所得を気にしない。道端に倒れた人を何の躊躇もなく助ける傾向がある。一方で『お金を払えない』と言われたら、患者を診ないのがアメリカ人医師のイメージです。保険制度の違いもありますが、仕事とは何かという捉え方も異なるように思います。
仕事に求めるのが『価値』か、『対価』か。極端に言い換えれば、人のために奉仕できるか、人のために犠牲になるかという捉え方の違いでしょうか。こうした日本人の職人気質的な労働観は、海外では珍しいのかもしれません。昨今、こうした価値観は問題視されることもありますが、私は誇るべき日本人の気質だと思っています」(Gさん)
もちろん、日本人にいいイメージを持っている人たちばかりではないだろう。上述したような“日本人らしさ”が海外で賞賛されることもあるが、一方で几帳面すぎて融通の効きにく国民性がデメリットとして捉えられることもあるだろう。しかし、先人たちが作り上げてきた“誇るべき日本人ブランド”の中には、これからも大切にしなければならない部分が少なくないのではないだろうか。