夫婦の生活基盤を考える上で重要なポイントになるのが「妻の働き方」だ。その選択を間違えると、年収が増えても手取り収入が減ってしまうことになりかねない。
というのも夫の扶養家族となっているパート妻は、働き方によって損得が分かれる。妻の年収が一定額を超えると、夫の扶養家族から外れ、自分の給料から厚生年金や健康保険料などの社会保険料を支払わなければならないからだ。その結果、手取りが大きく減る。
損得分岐点となる収入は会社の規模によって決まる。例えば従業員500人以下の中小企業勤務は「年収130万円の壁」で明暗が分かれる。
年収129万円の妻の手取りは約124万円、それに対して年収130万円になった途端、手取りは約100万円にまで減ってしまう。年収の3割近い30万円を源泉徴収される。年収1万円多く稼いだために、手取りが24万円も減る。こうした働き方は家計には大きなマイナスだ。
「厚生年金に加入すれば将来の年金額が増える」という政府の説明でこの“壁”を越えて働くケースが増えているが、実は、増える年金より、取られる保険料の方が多い。社会保険労務士の木村昇氏が指摘する。
「夫の扶養家族になっているパート妻は、夫の健康保険に加入し、国民年金の3号被保険者として保険料を払わなくていい“壁を越えない働き方”のほうがメリットが大きい。しかし、給料から社会保険料を引かれても、もっと手取りを増やしたいのであれば、中小企業勤務なら年収156万円以上稼ぐ必要があります」
※週刊ポスト2019年10月18・25日号