ではウトウトしている老親にはどう対処すればよいのだろう。
「基本的には、“夜はしっかり眠り、昼間は覚醒している”というサイクルをできるだけ維持した方がよいので、やさしく声をかけたり、散歩などに誘って体を動かすよう促したりするのがよいと思います」
ただこれが“正しい”ということではないと、岩切さんはきっぱりと言う。
「病気が疑われる場合は速やかに受診すべきですが、傾眠自体は年を重ねればごく自然なことともいえます。たとえば認知症が進んで、日中はほとんど傾眠状態でも介助すれば食べられて、コミュニケーションは取りにくいけれど、安定して健康状態を長く維持している人もいます。これもその人なりの生き方。ひとつの老いの形なのです」
若い世代にとっては、不調や病気があれば一刻も早く治療をして元の状態に戻すための医療だが、高齢者にその見方は必ずしも当てはまらないという。
「でも傾眠は悪いことばかりでもないと私は思います。いろいろなことができなくなる老いを、ハッキリした頭で自覚するのもまたつらいもの。それを和らげるようにウトウトしている時、本人は穏やかで安らかかもしれません。そんな面も含めて、ご家族は慌てず騒がず見守っていただきたいです」
傾眠は節目。医療関係者と家族で手を携えて
「生命維持に重要な脳の機能がちょっとしたことで落ちてしまう。傾眠傾向になってきたということは、難しい段階に入ってきた、ひとつの節目と考えた方がいいかもしれません」