地球環境に優しいエコな生活をしようと「レジ袋有料化」の流れが各地で進んでいる。いまやスーパーにエコバッグを持参する人が増え、当たり前の光景となりつつある。しかし、その普及に際し“不思議なこと”が起こっているという。
金融に関する著作も多い作家の橘玲氏はいう。
「近くのスーパーでは、会計の時に『レジ袋は不要です』というと、代金から2円引きにしてくれました。エコバッグ普及のキャンペーンでしたが、見ていると、大半の人は当然のようにレジ袋をもらっていました。わずか2円を節約するために特別なことをしようなどとは思わないのです。
ところがそれから少し経って、同じスーパーに行ってみると、レジに並んでいるほぼ全員がエコバッグを持っていて驚きました。2円引きのキャンペーンがようやく功を奏したのかというと、そうではありません。スーパーのレジ袋の代金は2円のままでしたが、買い物代金から2円引くのではなく、レジ袋が必要な人は2円で袋を買うようにしたのです。レジで袋をもらえなくて戸惑っている人に『1枚2円になりますけどよろしいですか』と聞くと、ほとんどの人が『それならいいです』と答え、品物を自分のバッグに詰め込んでいました」(橘氏・以下同)
だがよく考えると、この行動は経済合理性からは説明できない。橘氏が続ける。
「当たり前の話ですが、レジ袋代を2円引いてもらうのも、2円を追加で払うのは同じことです。ところが同じ2円なのに、『2円得する』ことにはなんの関心もなく、『2円損する』と気づいた途端、行動が変わってしまいます。
このような不思議なことが起こるのは、人が『得』よりも『損』に敏感に反応するように進化の過程で『設計』されているからです。レジ袋代を引いてもらって得することはどうでもよくても、目の前でレジ袋代を払うという損失は回避したいという、いわば“認知のゆがみ”です」