10月1日から消費税率が10%に引き上げられた一方で、景気対策として飲食料品と新聞は8%のまま税率が据え置かれる「軽減税率」が導入された。加えて、クレジットカードや電子マネー、スマホのアプリを使ったQRコード決済などによる「キャッシュレス・ポイント還元」も始まり、いくつもの税率が飛び交い、店頭などでは混乱が広がっている。
それだけにとどまらない。軽減税率の導入によって、確定申告の際には、自営業者を中心にさらなる混乱が起こる可能性も指摘されている。金融関連の著作も多い作家の橘玲氏は、「ひとことでいえば、軽減税率は納税者に“不可能なこと”をやらせようとしている」と指摘する。
「私のところに国税庁から『消費税の軽減税率制度に対応した経理・申告ガイド』なる資料が送られてきました。その冊子をめくると、『(軽減税率が始まると)これまでの記載事項に税率ごとの区分を追加した請求書等(区分記載請求書等)の発行や記帳などの経理(区分経理)を行う必要があります』と書いてあります。
『区分記載』というのは、請求書や領収書に『10%対象』と『8%対象』の品目を区分して記載することで、軽減税率対象品目には『*』や『☆』などの記号をつけたうえで、さらに『記号が軽減税率対象品目を示すことを明らかにする』必要があります。
こうした領収書を受け取ったら、次は帳簿に『8%対象(旧税率)』『8%対象(軽減)』『10%対象』を区分して記帳します。『同じ8%なんだからいっしょでかまわないではないか』と思うでしょうが、軽減税率では消費税率が6.3%から6.24%に下がり、その代わり地方消費税率が1.7%から1.76%に上がるのだといいます。
このような説明がまだまだ続くのですが、正直にいって、どうすればいいのかさっぱりわかりませんでした。私は税の専門家ではありませんが、税金の仕組みについての本を何冊か書いたことがあるから一般の人より少しは詳しいはずなのに……。軽減税率は“複雑怪奇”としかいいようがありません」