それにしても、なぜ、こんな制度を導入することになったのか。橘氏の見方だ。
「『軽減税率』という表現自体、税金を安くしてもらえるようで見栄えがいい。政治家にとっては、わかりやすい政策のほうが有権者に受け入れられやすい。これがポピュリズム(大衆民主政)で、政治家が当選するために有権者の素朴な期待に応えようとすると、合理的な制度からどんどん外れていってしまいます。消費税は貧しい人ほど負担が重くなるという逆進性がありますが、それなら貧困層に直接、金銭を還元した方がずっと効率がいい。このままでは税務に不慣れな中小の事業者が混乱するだけではないでしょうか」
消費増税を契機とした国民の混乱は、まだまだ終わりそうにない。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。