日本企業の生産性と給与を引き上げるカギとして注目されているのがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)だ。はたしてこれはどういう技術で、どのような効果が見込めるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、RPA導入後の働き方について考察する。
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いま多くの日本企業で働き方改革や業務効率化の切り札として注目されているのがRPA(Robotic Process Automation/ロボットによるホワイトカラーの間接業務の自動化)だ。RPAは、AI(人工知能)やML(機械学習)を活用し、これまで人間が担っていた経理、総務、人事、購買、在庫管理などの定型的な間接業務を自動化するツールで、「デジタルレイバー」や「仮想知的労働者」「仮想ロボット」とも呼ばれている。
欧米企業は約20年前から導入を進め、間接業務を効率化して生産性を飛躍的に高めてきた。世界のRPA市場規模は2020年に50億ドル(約5400億円)に達するとされ、マッキンゼーは2025年までに全世界で1億人以上のホワイトカラーがRPAに置き換えられると予想している。
しかし日本企業は、この世界的な潮流から完全に後れを取ってしまった。日本国内のRPA市場が成長し始めたのは、ようやく2015年頃からである。
報道によれば、RPAを活用して大きな成果を上げつつある企業もある。たとえば、住友商事はグループ全体で年間10万時間超に相当する労働時間を減らし、三井物産も年1万1000時間の業務量を削減した。三菱UFJ銀行は2023年度までに約3000人分に相当する業務量を減らす計画で、ソフトバンクは2020年度末までに4000人分の業務をRPAに代行させるという(『日本経済新聞』8月26日付電子版)。