各都道府県に本店を置き、各地方を中心に営業を展開している地方銀行(地銀)は、都市銀行のような大きな取引があるわけではないが、地域密着の中小企業にとってはなくてはならない存在である。その地銀の経営が、厳しい状況に陥っている。経営コンサルタントの大前研一氏が、窮地の地銀が生き残る方法について考察する。
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地方銀行の経営が限界に達している。金融庁が公表した地銀105行の2019年3月期決算(単体)の概要によると、純利益の合計額は前期比22.9%減の7686億円と3年連続で減少した。さらに、日本銀行は4月に発表した「金融システムレポート」で、10年後の2028年度には約6割の地銀が最終赤字になるとの試算を示した。人口減少と低成長に伴う資金需要の先細りで貸し出しの伸びが鈍り、銀行間の競争が激しくなって利ザヤの縮小も続くからだという。
だが、地銀を取り巻く環境はもっともっと厳しくなると思う。
私は以前、世界中がルーターでつながるローカル=グローバルの時代は世界最強の銀行が一つあれば事足りるので地銀は存在理由がないし、アベノミクスの中心的な政策であるゼロ金利やマイナス金利の下では銀行そのものが生存できない、と指摘した。それを如実に物語ったのが、投資家の預金額や年収の水増しなどの不正に手を染めたスルガ銀行であり、そういう危ない橋を渡るしか生き残っていく術がないほど、地銀は追い詰められているのだ。