かつてサラリーマンは定年後の人生プランに迷うことはあまりなかった。「60歳で定年を迎え、年金生活に入る」の1択だったからだ。その後、年金支給開始年齢が65歳に引き上げられ、定年から「5年間の年金空白」が生じると、その期間の生活を賄うために2013年からは企業に65歳までの雇用延長が義務化された。現在、多くのサラリーマンは「65歳まで働き、年金生活に入る」を基本に人生プランを考えるようになった。
しかし、今後はそれだけでは通用しなくなる。厚労省が10月に入ってから示した制度改正により、「年金をもらう時期」と「それまでの働き方」の組み合わせが多様化したからだ。定年後のライフスタイルを勘案して組み合わせを変えることにより、老後の人生をどう生きるかが決まってくる。
働いた分だけ受給額が増える
厚労省が9月に発表した年金財政検証の試算によると、今年65歳になる夫婦の年金総額は受給開始から30年間で約685万円少なくなり、今年60歳の夫婦は約800万円、50歳なら約880万円も減らされる。老後資金不足は2000万円どころでは済まない。
すでに年金受給している人はもちろんだが、もうすぐ年金受給が始まる世代、さらに50代、40代も、どのような準備が必要かの人生設計を今から考えておくことが肝要だ。前号では、定年後の「働き方」の見直しが重要になることをレポートした。今回の年金改革では「長く働いても年金を損しない」制度への転換が図られる。
まず、稼げば稼ぐほど年金をカットされる「在職老齢年金」制度が改正され、多く稼いでも年金カットされにくくなる。