親が認知症になると、金融機関が口座を凍結して、本人や家族でさえ預金を引き出せなくなることがある。その時の備えとなるのが成年後見(任意後見)と家族信託(民事信託)という2つの制度である。
成年後見は、家族などの後見人が親の財産を管理する制度で、財産の保全を目的とする。後見人は親の口座などから預金を引き出せるが、その使途は厳しくチェックされる。司法書士の山口和仁氏がいう。
「成年後見の申し立ては、申立書や各種添付書類が多いので、時間をかけたくないのなら、専門家に頼んでしまうほうがよいでしょう」
司法書士に依頼した場合は、5万~15万円が費用の相場となる。
一方の家族信託は、親が自分の財産の一部を家族に信託し、運用や管理を委ねる制度だ。信託契約の内容によって、家族に財産処分権を与えることができる。
「ただし、家族信託の契約書作成には法的知識や煩雑な手続きが必要で、一般人にはほぼ不可能です。弁護士や司法書士などの“士業”でも家族信託を扱えるのはまだ少数で、家族信託を専門的にやっている弁護士や司法書士などに相談する必要があります」(山口氏)
プロに任せた場合、信託財産の金額によるが20万~100万円の費用が目安だ。
※週刊ポスト2019年11月8・15日号