しかしYさんが声を大にして語るのは、親の経済力というポイントだ。Yさんが通ったのは、裕福な家庭の子弟が集まることで有名な学校だったが、その実情は想像を超えていた。
「バイトは禁止ですが、その校則を破る生徒はいません。親から結構な小遣いを渡されているので、バイトをする必要がないのです。学校の掲示板には奨学金の案内の紙が貼ってありましたが、見る人は誰もいなかった気がします。学費が年間100万円近くしますから、そもそも奨学金を貰いながら通うような学校ではないのです。
高2や高3になると、多くの同級生が『英語は渋谷、数学は新宿』といった具合に、科目によって塾を変え、2~3か所の塾に通っていました。評判の良い塾に通うため、通学定期以外に、学校と塾の区間の定期を買っている人もいました。
友人の中で、経済的な事情が理由で志望校を変えるケースは聞いたことがありません。“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”とばかりに、受けたいだけ受けるのが当たり前で、願書を7~8校出すのは序の口。10校以上受験する人もザラでした。第一志望に受からなかったため、とりあえず学費だけ納めて大学には行かない“仮面浪人”も、何人もいました。
さらに同級生の中には、受験のためにマンションを借りた家もありました。通学時間が1時間半かかるため、これをムダだと考えた親が、都心のど真ん中にある学校のすぐ近所にマンションを借り、母親と1年間そこに住み込んだのです」
Yさんはすでに高校を卒業して20年以上経っているが、子供を母校に入れた複数の同級生に話を聞くと、事情はほとんど変わっていないそう。文科相は「身の丈に合わせて……」と発言したが、現実問題としてこの格差を是正するのは容易ではないだろう。